幸せ家族製作所
2007年某月某日 不幸な少年をどうしても幸福にしたくて作りました。
※本日2回目の更新になります。
(2日目 その1)
カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでくる。
その明かりでスザクは目を覚ます。
それは、昔からの習性だ。シュナイゼルと暮らすようになってからも変わることのなかった、幼い頃からの。
ぱちりと音がしそうなほどはっきりと目を覚まして、スザクは体を起こそうとして、それに気付く。
(くま・・・・)
茶色の大きなクマのぬいぐるみ。
それをしっかりと抱きしめている自分。
「う・・・・」
ちょっと恥ずかしい姿だ、と慌ててそれを引き剥がす。
確か昨日、これがベッドの上にあった。だけれど、一緒に寝るとなんとなくこういうことになってしまう気がしたから、ぬいぐるみは下に降ろしておいたはずだけれど、とスザクは首を傾げた。
無意識にベッドに上げていたのだろうか、と。
まあいいか、とスザクはベッドから身を起こす。
それから時計を見る。
まだ時間は6時前だ。当然のように家の中では全く物音がしない。その静寂を壊さないようにそっと動きながら、スザクは自分の荷物の中からスウェットの上下を出した。
それに着替えて、扉を開けてきょろきょろと顔を出す。足音を忍ばせて1階まで降りて、電話の横にあったメモ用紙にロイドやセシルが起きたときのために「少し走ってきます」とだけ書置きしておく。玄関で靴を持って庭に面した窓から外に出る。そして、音を立てずに窓を閉める。
そこでやっとほおっと息を吐き出した。
ぐるりと見回して、シュナイゼルの家ほどではないけれど広い庭に嬉しくなる。鳥のさえずりや、風の音。どこかで降りる踏切の音に、車の走る音。隣で工事でもしているのか、大きな工事用の車両が見えて、そのずっと向こうには朝の冷たい澄んだ空気の中で、はっきりと山の形が見て取れる。
そんなものを眺めながらスザクは軽く体をほぐして、軽くこのあたりを走ってこよう、と玄関を飛び出した。
7時になると、目覚ましが鳴る。
その音で目を覚ましたセシルは、隣で眠る・・・・というかこの音で起きたとは思うのだが、一切動こうとしない相手を眺めたあと、重い瞼をなんとか持ち上げて体を起こした。
(昨日は何時に寝たのかしら)
仕事に夢中になると時間を忘れてしまうのがロイドの常だ。
子供じゃないんだから自分で管理して欲しいと思っていたのは過去の話だ。今ではすっかり諦めてしまっている自分が居る。
「あら」
それでもこれは作ってくれたんだ、とセシルはベッドの横のボードに置いてあったものを手に取る。
それを眺めると、頬が思わず緩む。
それは、昨晩撮影したスザクの写真だった。
異様に寝つきの良いスザクの寝室に入ったセシルは、残念ながらベッドの下に置かれていたぬいぐるみを眺めてしばらく考えた後、そっとスザクの横に置いてみた。するとどうだろう。そのクマに触れたスザクはそれを手繰り寄せて抱きかかえてしまったのだ。いやまあ、そもそもそれを期待して置いたのだが。
(か、可愛い・・・・!!!)
セシルが大喜びしたのは言うまでもない。
スザクを起こさないようそっと足を忍ばせてデジタルカメラを持ってきたセシルは、こっそりとその写真を撮った。何枚も何枚も。
仕事中のロイドの元に持っていき、現像してくれと置いてきたのだが、まさかこんなに早く印刷してくれるとは思っていなかった。
よし、今日はロイドの好きなものを作ろう、としっかり目の覚めたセシルはみなぎるやる気と共に朝を迎えた。
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スザクはものすごく寝起きが良さそうですよね。
セシルさんは普通。ロイドさんはダメそう。布団を剥がされて、悪いときは鉄拳をくらわないと起きなさそう。(笑)
12歳の子供にはどうかと思いますが、着ぐるみを着た小さいことか、大きなぬいぐるみを抱えた子供というのは凶悪に可愛いと思う。ラブ。
ちょっと調子に乗ってきました。頑張るぞ!次の話も書きたいし!(苦笑)