幸せ家族製作所
2007年某月某日 不幸な少年をどうしても幸福にしたくて作りました。
2007'03.18.Sun
「はい?もう一回言ってくれるかなぁ?」
ロイドは反射的にそう言ってしまった。勿論何を言われたかが聞こえなかったわけではない。ただ、言われた内容が信じられなかっただけだ。
自分の上司に言う言葉としては不躾にもほどがあったが、あいにくと彼にはそういう概念があまりなかったし、言われた側もそれを許容している。そして何よりも、今は完全なプライベートであり、言われた内容もプライベートなものだった。
いや、プライベートにも程があるだろう、という内容だ。
言った側・・・・彼ことロイド・アスプルンドの上司であり大会社の御曹司でもあるシュナイゼル・エル・ブリタニアは、ロイドの言葉に神妙な表情を浮かべ、溜息を吐きながらもう一度同じ言葉を口にした。
「これを、お前の家で預かってくれ」
隣に座る子供の頭を撫でながら、いかにも残念そうに。
シュナイゼル・エル・ブリタニアはロイドの古くからの友人である。
ロイドの父はブリタニア財団に属する系列会社の社長であり、つまりロイド自体もそこそこの御曹司でもある。だが、父の仕事に全く興味のなかった彼は、次男であったことも手伝って、自分の好きなことをやりながら生きていくことを勝手に決めて、財産の生前分与だけを受け取って後はほとんど家と縁を切って生活をしている。別段仲が悪いというほどでもないので、絶縁している訳でもないのだが、何事もなければ年始の挨拶意外は一年間音信不通、ということもあるほどだった。
そして好きなことをやっている彼は、学生時代に知り合ったシュナイゼルが起業する際誘われ、趣味と実益とを見事に兼ね備えたその職場で日夜楽しく働いていた。(と言ってもひたすらソフトウェアの開発をしているだけの彼には、自宅こそが職場である訳なのだが)
学生時代から変人で通っていたロイドと、ブリタニア財団の御曹司のシュナイゼルが仲が良いというのも妙な話だったが、彼らはお互いほとんど唯一といってもいいほどの「友人」だった。
他人に興味のないロイドにとって、何も押し付けてこないシュナイゼルという人間は居心地が良く、そして自分が特別であることを理解して、他人が自分に対してどんな感情を抱くかさえも理解しきっていたシュナイゼルにとって「変人」であるロイドの意外性はいかにも興味深かった。
珍しくも互いに「面白い」と思ったのがきっかけで、今でもその関係が壊れていないということは確かに気があったのだろう、とロイドは思う。・・・・そんな恥ずかしいことを口にする気は全くないが。
その友人の顔を、ロイドはまじまじと見てしまう。
彼が「これ」と言う少年のことは勿論ロイドも知っている。
「枢木スザク」という名のその子供をシュナイゼルが引き取る、と言い出したときには耳を疑ったものだ。(その際の根回しにいろいろとさせられたことも覚えている。本当に唐突で大変だったのだ)
『あなたに子供なんて絶対無理だって!何考えてるのぉ?』
そんなことを言った覚えもあった。
だが、実際に彼らが共に生活をするようになって、もっと驚いた。
これがまた異様にかいがいしい。
そして猫かわいがりだった。
あまり意志の疎通はうまく行っていないこともあるようだったが、それでもシュナイゼルはスザクを酷く可愛がり、そしてスザクもだんだんとシュナイゼルになついていっていた。
まさかあのシュナイゼルがねえ、と思ったのはそう昔の話ではない。
つまり何が言いたいかというと、それほど可愛がっていた子供を何故突然、ということだった。
というか何故自分に、と考えて、そこでやっと気付く。
「あー・・・・もしかして、この間の件で?」
「・・・・・・・・ああ」
ロイドの言葉に頷くシュナイゼルの顔はどこか疲れが見える。
(そういえば、あの時のこの人の動揺っぷりは尋常じゃなかったもんなあ・・・・)
ロイドはそのときのことを思い出して溜息を吐く。
**********
お久し振りです。やっと再開します~。
とりあえず予告どおりスザクがシュナイゼルのところからロイドさんとこに行く話しです。
・・・・誘拐ネタ先にやったほうがよかったかなあ、と思いつつまだネタ詰まってないので、自動手記で書けそうなこっちから始めることにしてみました。<自動手記って・・・・
相変わらずちまちまやっていくつもりですが、宜しければお付き合いくださいv
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