幸せ家族製作所
2007年某月某日 不幸な少年をどうしても幸福にしたくて作りました。
2007'03.27.Tue
(2日目 その3)
昼食を食べてしばらくくつろいだ後、ロイドは書斎(というよりも、むしろラボと呼ぶ方が適切な部屋ではあるが)に篭ろうとした。
そこに、片づけを手伝い終えたスザクが軽い足音を響かせながら声を掛けた。
「ロイドさん、これ、ありがとうございました」
その手には、昨晩スザクの部屋にとりつけたゲーム機用のソフトがある。スザクのような子供が好みそうなもの、ということでロイドが選んだのはシューティングゲームだった。レベルがそれなりに分けられていて、初心者用から上級者用までかなり楽しむことができる。スザクはゲームをするのは初めてということだから、こういった単純なものがいいだろうということで選び、とりあえず1本と渡したものだ。
「ん~、どうかした?」
「え?あ、面白かったです。また何か遊んでもよさそうなものあったら、よかったら貸してください」
「・・・・え?」
ちょっと意味がよく分からないんだけど、とロイドは首を傾げる。
どうも美味く会話がかみ合っていない。
「もういいっていうこと?」
「えーっと?」
「もうやりたくない?面白くなかった?」
ひょっとしてつまらなかったのだろうか。アウトドア派の子供はゲームなんてそんなに楽しめないんだろうか、とスザクが自分の嗜好には沿わないことを、ロイドはつまらなく思おうとした。
「やりたくない、っていうか・・・・クリアしちゃったから、とりあえずお返ししようかな、と」
「・・・・・・・・は?」
「えーっと、面白かったです、本当に」
ロイドの反応に、スザクはどう返せばいいのか分からなくなる。
そのロイドは、今の会話をもう一度頭の中で整理する。
(クリアした?)
確かやり始めたのは昨晩だったはずだが。
内容としてはそんなに難しいものではない。操作ミスさえなければ一時間強ほどでクリアすることは出来るだろう。だが、そのレベルに至るまでには、何度も全滅を繰り返しつつ、敵の配置を覚えつつ、操作に慣れていくという過程が必要なはずだ。
昨日の夜始めた時点では、スザクは本当の本当に初心者だったはずだ。
これで方向を決めて、これでミサイルを発射して、と事細かに説明したのはロイド自身だったのだからそれは間違いない。
「えーと、参考までにレベルは?」
「あ、昨日初心者向けと中級者向けのクリア出来たから、今日上級者やってみました。一回全滅しちゃったんですけど」
困ったように笑う子供の言葉には、嘘も見栄もないような気がした。
だが、ロイドの経験からそれはちょっと有り得ない。
「一回?昨日は?」
「一番最初だけ何機か壊しましたけど、だんだん操作に慣れたら結構できました。あ、でもタイムとかはよく分からないんですけど。得点とか。いいのか悪いのか」
「・・・・・・・・まだデータ残ってるよね?」
「はい」
「よし、ちょっと見てみよう!」
「え?あ、の、ロイドさん?」
背中を押されて自分の部屋に向かって歩かされるスザクには、訳が分からなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
メモリに入っているデータには、クリアの日時と得点が書き込まれている。
それを眺めながら、ロイドは固まるしかなかった。
確かに、スザクは嘘などひとつもついていない。もしかしてセシルがクリアしているんじゃないかなんて疑いを一瞬抱いてしまったが、この得点は彼女にも叩き出せないものだ。初級レベルは確かに言っていた通り、何機か撃墜されて時間もそこそこ掛かっている。――が、よく見てみるとそれは1回目のトライではないのだろうかと思う時間で行われたものだ。
それを証明するように、その1時間後に、中級レベルがクリアされている。こちらは1機撃墜されただけで、クリア時間も無駄がほとんどない。
そして上級者レベル。そこそこ以上に難しく作ってあったはずだったのだが、見事にクリアされている。
ちょっと待ってよありえないでしょう、というのがロイドの感想だった。
「ロイドさん?」
「・・・・・・・・」
スザクの呼びかけを黙殺して、ロイドは立ち上がる。
そしてラボに入り、セシルが整理した棚の中にあるソフトの中から、3つほど選んでスザクの部屋に持ち込んだ。
「ちょっとこれやってみてくれる?」
データは見た。
だが、ちょっと信じられないことというのは世の中にはあるのだ。
だったら、自分の目で確かめるしかない。
ロイドは持ち込んだソフトを本体にセットして、スザクにコントローラーを握らせた。操作を説明して、ゲームをスタートする。
三十分後には、興奮して階段を駆け降り、大喜びでセシルに説明したあと、受話器を手に取るロイドの姿があった。
**********
開発中のゲームで「アーサー王 最強の円卓の騎士」とかあったら笑える。<・・・・
というわけで、二日目はこんな感じで。今晩(というか、いつものことながら日付は変わっていると思いますが)くらいにオマケをUPして二日目終了したいと思います。
昼食を食べてしばらくくつろいだ後、ロイドは書斎(というよりも、むしろラボと呼ぶ方が適切な部屋ではあるが)に篭ろうとした。
そこに、片づけを手伝い終えたスザクが軽い足音を響かせながら声を掛けた。
「ロイドさん、これ、ありがとうございました」
その手には、昨晩スザクの部屋にとりつけたゲーム機用のソフトがある。スザクのような子供が好みそうなもの、ということでロイドが選んだのはシューティングゲームだった。レベルがそれなりに分けられていて、初心者用から上級者用までかなり楽しむことができる。スザクはゲームをするのは初めてということだから、こういった単純なものがいいだろうということで選び、とりあえず1本と渡したものだ。
「ん~、どうかした?」
「え?あ、面白かったです。また何か遊んでもよさそうなものあったら、よかったら貸してください」
「・・・・え?」
ちょっと意味がよく分からないんだけど、とロイドは首を傾げる。
どうも美味く会話がかみ合っていない。
「もういいっていうこと?」
「えーっと?」
「もうやりたくない?面白くなかった?」
ひょっとしてつまらなかったのだろうか。アウトドア派の子供はゲームなんてそんなに楽しめないんだろうか、とスザクが自分の嗜好には沿わないことを、ロイドはつまらなく思おうとした。
「やりたくない、っていうか・・・・クリアしちゃったから、とりあえずお返ししようかな、と」
「・・・・・・・・は?」
「えーっと、面白かったです、本当に」
ロイドの反応に、スザクはどう返せばいいのか分からなくなる。
そのロイドは、今の会話をもう一度頭の中で整理する。
(クリアした?)
確かやり始めたのは昨晩だったはずだが。
内容としてはそんなに難しいものではない。操作ミスさえなければ一時間強ほどでクリアすることは出来るだろう。だが、そのレベルに至るまでには、何度も全滅を繰り返しつつ、敵の配置を覚えつつ、操作に慣れていくという過程が必要なはずだ。
昨日の夜始めた時点では、スザクは本当の本当に初心者だったはずだ。
これで方向を決めて、これでミサイルを発射して、と事細かに説明したのはロイド自身だったのだからそれは間違いない。
「えーと、参考までにレベルは?」
「あ、昨日初心者向けと中級者向けのクリア出来たから、今日上級者やってみました。一回全滅しちゃったんですけど」
困ったように笑う子供の言葉には、嘘も見栄もないような気がした。
だが、ロイドの経験からそれはちょっと有り得ない。
「一回?昨日は?」
「一番最初だけ何機か壊しましたけど、だんだん操作に慣れたら結構できました。あ、でもタイムとかはよく分からないんですけど。得点とか。いいのか悪いのか」
「・・・・・・・・まだデータ残ってるよね?」
「はい」
「よし、ちょっと見てみよう!」
「え?あ、の、ロイドさん?」
背中を押されて自分の部屋に向かって歩かされるスザクには、訳が分からなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
メモリに入っているデータには、クリアの日時と得点が書き込まれている。
それを眺めながら、ロイドは固まるしかなかった。
確かに、スザクは嘘などひとつもついていない。もしかしてセシルがクリアしているんじゃないかなんて疑いを一瞬抱いてしまったが、この得点は彼女にも叩き出せないものだ。初級レベルは確かに言っていた通り、何機か撃墜されて時間もそこそこ掛かっている。――が、よく見てみるとそれは1回目のトライではないのだろうかと思う時間で行われたものだ。
それを証明するように、その1時間後に、中級レベルがクリアされている。こちらは1機撃墜されただけで、クリア時間も無駄がほとんどない。
そして上級者レベル。そこそこ以上に難しく作ってあったはずだったのだが、見事にクリアされている。
ちょっと待ってよありえないでしょう、というのがロイドの感想だった。
「ロイドさん?」
「・・・・・・・・」
スザクの呼びかけを黙殺して、ロイドは立ち上がる。
そしてラボに入り、セシルが整理した棚の中にあるソフトの中から、3つほど選んでスザクの部屋に持ち込んだ。
「ちょっとこれやってみてくれる?」
データは見た。
だが、ちょっと信じられないことというのは世の中にはあるのだ。
だったら、自分の目で確かめるしかない。
ロイドは持ち込んだソフトを本体にセットして、スザクにコントローラーを握らせた。操作を説明して、ゲームをスタートする。
三十分後には、興奮して階段を駆け降り、大喜びでセシルに説明したあと、受話器を手に取るロイドの姿があった。
**********
開発中のゲームで「アーサー王 最強の円卓の騎士」とかあったら笑える。<・・・・
というわけで、二日目はこんな感じで。今晩(というか、いつものことながら日付は変わっていると思いますが)くらいにオマケをUPして二日目終了したいと思います。
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