忍者ブログ

幸せ家族製作所

2007年某月某日 不幸な少年をどうしても幸福にしたくて作りました。

2024'11.16.Sat
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2007'03.22.Thu

(1日目 その2)

「スザク君は紅茶とオレンジジュース、どっちがいい?」
 セシルに笑顔で聞かれたスザクは、柔らかいソファに座りながら小さく首を傾げる。しばらく考えてから「オレンジジュースもらってもいいですか?」と小さな声で告げられる言葉に、セシルは勿論、と返した。
(かわいい・・・・っ!!)
 この家でセシルは夫であるロイドと二人で暮らしている。そしてやってくる客人と言えばシュナイゼルばかりだ。双方共に目の保養になりうる容姿をしてはいるが、ロイドのことは長年の付き合いでその破綻した性格を知っていた。シュナイゼルにしても出会った当初こそ立場にも姿にも憧れと尊敬を抱いていたのだが、その行状やロイドとの会話を聞いている限り、どう考えても一筋縄でいくような可愛らしい性格はしていない。
 その点、スザクは時折シュナイゼルに連れられてやってくるので何度か話したが、とても素直な性格をしていて、子供だということを差し引いても充分に愛らしく、セシルは好感を抱いていた。
 ――まあそれでも正直、突然シュナイゼルに「スザクを預かって欲しいのだが」と言われたときには驚いたのだが。
 生活環境を考えて見れば、確かにこのままにしておくのはどうかという状況ではあった。
 だが、普通結婚して一年たらずの夫婦に子供を預かれというのはどうだろう、と思いつつも、自分たちに子供が出来ることなど一生ないかもしれないと思ってしまっていたセシルは、しばらく考えた後に「はい」と答えた。
 いろいろと複雑な思いはあったが、出来れば力になりたいと思ったのだ。
 あの事件のときの、あんな姿を見せられたセシルは、心からそう思っていた。
「はい、スザク君」
 微笑みながらジュースを前に置くと「ありがとうございます」というややはにかんだような笑顔を向けられた。


「まず一週間うちに居てもらうんだけど・・・・何か予定とかあるかしら?」
 スザクが学校に行っていないことはセシルも知っていた。
 最初それを聞いたときには思わず絶句したのだが、いろいろと事情はあるらしい。
「予定?」
「そう。習い事とか」
「いえ、特に」
「何も?」
「はい」
 迷いのないスザクの返事にセシルはそう、と溜息混じりに呟く。
 確か今十二だと聞いていたのだけれど、何もしてなくていいのかしら、と考えてしまうのは仕方のないことだろう。
 だがセシルの横でロイドは「そっか~、暇なんだ、いいねえ」などと呟いている。
 そちらを軽くつま先で蹴って呻かせておいて、セシルはスザクに尋ねる。
「じゃあ、スザク君は一日どうやって過ごしてるの?」
「一日・・・・」
「ええ、何時ごろ起きてるとか、何をしている、とか」
「起きるのは六時ごろです。それから庭で鍛錬をして、朝ごはんを作って。シュナイゼルさんを起こして、それからごはんを食べて、片付けて――」
「スザク君がごはんを作ってるの!?」
「え、あ、はい・・・・」
 驚いたように声を上げるセシルに、スザクが不思議そうに頷く。
 彼にとってそれは当たり前のことだったので、なぜそんなことを聞くのだろう、と。
「まあ、あの人が作るとも思えないしねえ」
 でもお手伝いさんとか居るんじゃないの?と尋ねるロイドにスザクは頷く。
「はい。最初はその人が作ってくれてたんですけど、僕は家でも作ってたりしてたから、お世話になってるし作ります、って言ったらシュナイゼルさんが「そうか」って・・・・」
「ああ、あの人なら言いそうだねえ」
「というか、家でも作ってたって・・・・」
 セシルは思わず眩暈を感じそうになってしまう。確かシュナイゼルがスザクを引き取ったのが二年前だったことを考えると、当時彼は十歳だったはずだ。家で作っていた、ということは少なくともその頃にはということになる。
「その、お父さんは仕事で忙しかったし、お母さん、は、その・・・・体が悪くなってからは、僕が・・・・って、大したものは出来ないんですけど」
 話しながら沈んだ表情になっていくスザクに、セシルはしまったと思いながらも(なんて健気で可愛いの!!)と不謹慎な気持ちで感動していた。
 隣に座る男に見習わせたい。
 爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
 セシルの脳裏には自分が体調を崩したときの、どうしようもなく役立たずなばかりか、考えなしでどうしようもない行動ばかりして余計に病人に体力を使わせてくれるロイドの姿が浮かんでいた。
 二十四にもなってそんなことしか出来ない男と比べて、細やかな心遣いの出来る少年のなんと優しいことか。
 感激しているセシルに、更に追い討ちをかけるように、スザクは顔を上げて、自分の陰気を打ち払うように笑顔になって言った。

「あの、だから。僕、迷惑かけるばっかりだから、出来ることならなんでもお手伝いしますから、言ってください」

 セシルが見事に撃ち落されたのは言うまでもない。
 驚くスザクを抱きしめながら、絶対に可愛がる、幸せにすると心に誓っていた。


**********
セシルさんの風邪ネタはやってみたい。ロイドさんと二人のときに是非。(回復したらロイドさんはひどい目にあいます)
あとは、スザクの風邪ネタも。あぁぁぁ、書きたいものばかりが増えていく・・・・
PR
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9
«  BackHOME : Next »
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
メールフォーム
ブログ内検索

Powered by Ninja.blog * TemplateDesign by TMP

忍者ブログ[PR]